本日、ご紹介する『田舎の日曜日』は、ベルトラン・タヴェルニエ監督の1984年の作品。同年に、カンヌ国際映画祭の監督賞を受賞しています。
時は1912年の秋口。パリ郊外に余生を送る画家ラドミラルの週末の一日を描いたもので、話は一見なんと言うこともなく流れていくのですが、そこに、孫を連れた息子夫婦と、娘イレーヌがかち合って、ストーリーにかすかに泡が立ち始めます。
保守的な息子とその幸せな家族、恋愛にも自由で先進的な娘。
対照的な息子と娘に具現化している価値観の対立は、実はアドミラル自身の心の内の価値観の対立でもあります。
果たして自分はどちらを選ぶべきだったのかと、老画家は人生を功罪相半ばに振り返る・・・・・・あらすじで言ってしまうと、このように非常に些細な話です。特になにか事件が起こるわけでもなく、登場人物も議論を特別に深めはしません。しかし、それぞれの立場にいつの間にか自分の身を置いて、一緒にいろいろと感じ、考えさせられた作品でした。
郊外の風景も大変美しい見ものです。
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この映画で使われた音楽は、ガブリエル・フォレ(1945-1924)の最晩年の室内楽曲。
かなり、長めに流されて、美しい映像を助ける以上の役割があったと思います。
曲目を挙げれば、
ピアノ五重奏曲第2番 Op.115
ピアノ三重奏曲 Op.120
弦楽四重奏曲 Op.121
フォレらしい淡いメロディの裏に、意外(?)な構成の妙が楽しめます。
一つ、フォレの言葉を引用しましょう。
君はどんなことでも物事を決めつけ過ぎる。僕は違う。
今まで生きてきたのと同じように、ふわふわと漂うような
精神をもったまま死んで行きたい。
マルグリット・ロン著 『回想のフォーレ―ピアノ曲をめぐって』
推薦盤には、映画でもその録音が使われたジャン・ユボー(Pf)とヴィア・ノヴァ四重奏団を挙げましょう。
フォーレ:室内楽全集(1)
・国内盤
フォーレ:室内楽全集(2)
・国内盤
上述の映画使用曲では、ピアノ五重奏曲第二番が、この全集の(1)に、他の二曲 ― ピアノ・トリオと弦楽四重奏曲 ― は全集の(2)に収録。ユボーには、フォレのピアノ作品の録音もございます。
フォーレ:ピアノ作品全集(1)
・国内盤
フォーレ:ピアノ作品全集(2)
・国内盤
こちらも評判が高く、演奏の質、曲目の双方を考えて、リファレンスと言って良いものです。フォレに興味をお持ちになられましたら、ぜひご検討ください。
後、もう一つフォレの室内楽を集めたもので、バルビゼ、ハイドシェック、コラール、フランソワらフランスの才人ピアニストにヴァイオリンのフェラスやチェロのトルトゥリエらの演奏を集めたものも抜かす訳にはまいりません!
Fauré: Musique de Chambre(5pc)
P.Barbizet, J-P.Collard, S.François, Eric Heidsieck(Pf), A.Dumay, C.Ferras(Vn), P.Tortelier(Vc)他
・輸入盤
よりはっきりした演奏がお好みの場合はこちらの方が好みにあうでしょう!
この5枚組は、こちらの商品が廉価再発売されたもの。かなりお求めやすくなっています。